読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

EsIdea -仕事について考える-

仕事や心理について

100社以上落ちて超絶ブラックに新卒入社した話 退職編 後編

疑惑

店長会議で、会社のビジネス自体に疑問を持った私は業務をこなしつつ、注意を払うようになった。

この会社は親会社が食品の卸しを行い、その食材を使って子会社が2つのビジネスを展開していた。1つは飲食店のフランチャイズ運営と売却。2つ目は弁当だ。

その頃私は、調理の基本ができるようになったことが知れ渡り、赤坂以外にも新宿3丁目、光が丘などの店舗でヘルプをしていた。

色々な店舗で仕事をするうちに気づいたことがあった。それは食材の過剰な余り具合である。特に麺が死ぬほど余って、どこの店舗も冷蔵庫がパンパンになっていた。酷いところでは冷蔵庫に入り切らず、ビニール袋で保管してあり、ところどころカビているものもあった。私は麺を見て少しでもカビていたら捨てていたが、他の店舗でそういう対応がされていたかは定かではない。恐ろしいことである。

どこの店舗でも、オペレーションは末期状態だった。それなのに、ビールを100円で売ったり、商品を半額にしたりして、とにかく客を入れていた。

安ければ客はたくさん来る。ただし、オペレーションが酷いので、苦情は日常茶飯事であった。

売上をいくら上げても赤字

次に調べたのは原価率だ。社員に原価を聞いたり、マニュアルに書いてある原価を計算して、算出をしてみた。すると原価率は50%を超えていた。つまり、通常営業をしても半分ロスすれば粗利が飛ぶということだ。もちろんそこから家賃や、人件費、光熱費、雑費が差し引かれる。

商品半額などしたら、売れば売るほど赤字になる。それでも親会社の圧力で材料の供給量は減らない。客を呼んでも地獄、呼ばなければさらなる地獄が待っているという状況だ。

ーーーこれは破綻している

そう思ったわたしはエリアマネージャーにその旨を伝えることにした。

対立

エリアマネージャーへその旨を伝えると、信じられない返信がきた。

要約すると、

・新卒が気にすることじゃない

・とにかく売上をあげろ

・終電以降も店舗に残れ

とのことだった。

わたしの中の疑念が確信に変わった。

これは、親会社が儲けるためだけのシステムだ。それをおそらくわかっていながら本社幹部は運営をしている。新卒を大量に雇ったのも、アルバイトより人件費を安く仕入れるためだ。

我慢の限界だった。この日から、エリアマネージャー側との対立が始まった。

独断

どうあがいてもこのままでは、いくらやっても赤字であることは変わらない。そこで私は自分の考えに沿って、自分のできるだけのことをすることにした。

まず、掃除だ。どの店舗も掃除をほとんどしておらず、恐ろしく汚かった。ある店舗では食洗機が何年も洗っていないのか水垢が鍾乳洞のように層になっていた。

飲食であるのに、こんな状態で運営している事自体、わたしは我慢がならなかった。

どの店舗にいっても忙しい時間帯以外はまず掃除をした。ひどいところでは1日掃除をさせてくれと頼み込んだ。

私の行った店舗はそこそこ綺麗になった。少なくとも、汚さで苦情がきたり、衛生面でトラブルが起きるリスクを減らすことができた。

もちろん、エリアマネージャーはいい顔をしなかった。顔を合わせば口論になるような状況だった。掃除をせずに、とにかく売れと言われ続けた。

「わたしは汚れた皿でお客に食べ物を出したくありません」と言うと、

「俺は汚れた皿でも客の満足度を上げることが出来る」と豪語していた。

彼は飲食業界の人間として、越えてはいけない一線を超えていた。わたしはもう彼に従う気が一切なくなっていた。

密偵

徐々に私は嫌がらせを受けるようになった。

何も教えられずに、店舗に放りこまれて叱られたり、到底終わらない枚数のビラ配りを強要されたりもした。

さらには、先輩社員がわたしを監視するようになった。社員はほぼエリアマネージャーの犬なので、どこにいっても監視され、あることもないことも報告された。

そのたびに叱責されたが、わたしはすべてスルーしていた。

仕事もその頃になるとやる気を完全に失い、サボるようになっていった。体の疲労はそれにより少しだけ和らいだが、心はさらに荒んでいった。

解雇通告

わたしが時折勝手に休憩を取っていることを、先輩社員が報告をした。すると、エリアマネージャーとその先輩社員が同席で、ファミレスに連れて行かれた。

エリアマネージャーはサボりの実態を咎めたうえで、色々と持論を展開し、密告した先輩は何も理解していないような顔で馬鹿みたいに相槌をうっていた。

エリアマネージャーが言うには、仕事ができないやつは3つの何かが足りないそうだ。その3つとは、能力、時間、やる気で、お前にはやる気が足りないとのことだった。

何のためにこの持論を展開したのか理解不能だったが、実際にやる気はなかったので、普通に「なるほど」と答えてしまった。

その一言がエリアマネージャーをキレさせた。

「なるほどじゃねぇ!舐めてんのかお前!」

ファミレスの机を蹴り上げて、エリアマネージャーが叫んだ。

エリアマネージャーの怒声がファミレスに響き渡った。多分ファミレスに居た人間の中で、一番無反応だったのはわたしだろう。

わたしはもう既に完全に冷めきっていた。

このままだと、破錠するであろうビジネスになんの疑問を抱かず会社の犬になっている社員にも。それを根性論だけで無策につっぱしるエリアマネージャーにも。おそらく破綻することがわかっていながら、過剰な供給をする非情な親会社にも。全てに愛想が尽きていた。

「辞めます」

自分でも不思議なほど、静かに、穏やかな気持ちでそう言っていた。

全てがどうでもよかった。

つづき

shigoto-toha.hatenablog.jp